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『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』

WALD9にて鑑賞。

映画館に行く前は宣伝を鵜呑みにして「お気楽チャランポラン議員が一念発起、がんばって歴史を変える!」みたいな感動娯楽映画を期待していたのだが、実際観るとそういう映画としては楽しめない。確かに主人公チャーリー・ウィルソン議員は努力の末、地元勢力に訓練と武器を与えてアフガニスタンからソ連軍を追い出す、という偉業を成し遂げる。しかし映画の最後のあたりではその数年後アフガニスタンで実権を握ることになるタリバンの影が示唆されているし、アメリカはソ連軍が出て行った後のアフガニスタンを安定させるための有効な手をなにも打たなかった、ということが描かれていてなんともビターな感じだ。ソ連軍を撃退するために訓練されたアフガニスタンの地元勢力がアルカイダの起源である、というよく知られた説も知識としてあるし。「塞翁が馬」の故事を引用している点で、映画もそのことに自覚的だといえる。

それからウィルソン議員も酒好き・女好きという点は確かにその通り描かれているけど、最初の方でクリスマスに消防署前に設置する聖母子像のことで陳情に来た男のあしらい方は見事だし、アフガニスタン支援のための予算獲得とかイスラエルやエジプトなどの協力のとりつけの過程で一貫した優れた政治手腕を見せ、ダメ議員というのとはほど遠い。ことが淡々とスムーズに進みすぎてこの映画を娯楽映画として観にくい一要因になっている。

それでは歴史の中からひとつながりの出来事を切り出してきて、その中の人間模様も交えながら、ひたすら硬派にできるかぎり客観的視点から描く、という例えばスピルバーグの『ミュンヘン』のような映画なのか、というとそういう映画にもなっていない。『ミュンヘン』になるためには、ソ連軍に対する一方的な極悪な描き方が邪魔なのだ。「ソ連軍のヘリ数機が飛来し、市民を虐殺。クルーは他愛もない雑談をしている。民兵が供与されたスティンガー・ミサイルで1機を撃墜。残りのヘリは全く予想だにしていなかった事態に大混乱に陥り、順次撃墜される。」というくだりは、これが娯楽映画だったなら最高にカタルシスの得られる部分なんだが。

80年代の描き方としても中途半端な感じで、当時のヒット曲などたくさん使うと面白かったと思うのだが、ピンと来たのはデビッド・ボウイの『レッツ・ダンス』だけだった。女の子のヘアとかファッションとかそっち方面にあかるい人が見れば、結構ディテールにこだわっていたりして面白いのかもしれないけど、私にはいまひとつ印象に残らなかった。

それでは『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』はダメ映画かというと、そういうわけでもない。ウィルソン議員と協力して計画を推し進めるCIAエージェント、ガストの役を務めるフィリップ・シーモア・ホフマンの演技が素晴らしい。ガストが初めてウィルソンのオフィスを訪れ、部屋を出たり入ったりするところとか、ウィルソン、ガスト、モサドのエージェントの3人で計画を練るところとかいいシーンがいくつもある。部分部分をみるとこの映画には第一級のシーンが多いのだ。40才になっても素晴らしいジュリア・ロバーツの水着姿も一見の価値あり。

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